電力自由化でフランスの電気料金はどう変わったの?
大口の電力需要家を対象に始まった電力自由化は、その対象をようやく一般家庭にまで拡大する段階にたどり着きました。
しかし海外を見れば、すでに完全自由化を達成しているお国もちらほらと・・・。
その一つがフランスです。
フランスでは電気料金はどう変化したのでしょうか。
一般消費者たちはこの制度をどう捉えているの?
神様は、人間に「失敗から学ぶ」というスバラシイ能力を授けてくださいました。
せっかく与えられた能力は生かさなければもったいない!!
私たち日本人は、一歩早く電力自由化を導入したフランスの成功と失敗に学ぶ必要があります。
「少ない物で豊かに暮らす」というミニマリストの印象が強いフランス。
日本では、『フランス人は10着しか服を持たない』という本が大ヒットとなっていますよね。
先進国でありながら、「浪費せず、気に入ったものを大切に使う」という精神は、私たち日本人も学ぶべきところが多いように思います。
さて、そのフランスの電力事情ですが、すでに2007年に完全自由化を達成!
3兆円とも言われる規模の市場が開放され、200社近い企業の競争が繰り広げられているようです。
元々、フランスでは「電気はEDF」「ガスはGDF」という国営の企業が独占していましたが、2000年の「電力自由化法」の制定を機に電力自由化が本格的に推進される流れとなったようです。
やはり最初は消費電力の多い企業(年間消費電力が1億kWh以上)などを対象とした自由化から始まり、次は1,600万kWh以上、2003年には700万kWh以上・・・と段階的に自由化の対象が拡大されてきたようです。
気になる電気料金は、電力自由化後は緩やかに上昇している傾向にあるのだとか。
ただ、原子力発電の割合が多いために燃料費高騰の影響を受けにくく、他国に比べると電気料金は安く抑えられているという見方もできます。
電力自由化後、電力の購入先を変更しようかどうか悩み中だという方も多いでしょう。
「電気料金が下がるなら他社に切り替えるけど、ほとんど変わらないんだったらこのままでいいや」という方がほとんどなのではないでしょうか。
フランスではどうだったのか?と言えば、電力自由化で電気やガスの契約先を変更した人は全世帯のたった2%。
みなさんは、なぜそんなに慎重なのでしょうか?
最大の理由としては、電力自由化後も実質的にはEDFとGDFの独占状態が続いていることが挙げられます。
フランスでは、電気やガスの購入先を変更しない家庭に対して「規制料金」が適用されており、これは変更した家庭に適用される「市場料金」よりも割安なんですって!
市場料金のほうには卸電力市場価格が反映されるため、変動も激しく結果的に電気料金も高くなってしまうんですね・・・。
日本に例えていえば、「○○電力との契約を続けるなら電気料金を安くしてやるけど、他の会社と新しく契約するんだったら自己責任だよ」と、国に突き放されたようなものです。
そりゃあ、消費者が契約先の変更に慎重になるのも無理はありませんよね・・・。
こんなアンフェアな状況を、フランス政府が許していること自体がおかしいですね。
実際、欧州委員会から「健全な状態ではない。規制料金は廃止すべきだ」との指摘を受けたよう。
このような経緯もあり、2016年度以降は規制料金が廃止されることが決まっています。
このように、フランスでは政府の不適切な関与によって市場の競争が不健全な状態が続いていたわけです。
日本では完全なる自由化なのでこのようなことはない・・・と信じたいですね。
また、フランスで電力会社の切り替えが進まなかった原因のひとつとして、「電力会社や電気料金プランの比較サイトの使い勝手があまり良くなった」ということも指摘されています。
住所や家族構成、住宅のタイプ(平屋か二階建てか?オール電化か?スマートハウスか?)、ライフスタイル(昼型の生活?それとも夜型?)などを入力して自分たちにとって最適な電気料金プランを探し、検索結果からダイレクトに電力会社の切り替えができる。
これなら、時間のロスやストレスなく電力会社の切り替えができますよね。
このような理想の形のスイッチングサイト、日本のエンジニアならきっと作れるはずです!!
イギリスの電力自由化で電気料金はどうなった?
世界の動きに先駆けて電力自由化を導入したイギリスでは、一般家庭の電気料金はどうなったのでしょうか。
また、イギリスの消費者たちは自由化をどう捉え、どのような基準で電力会社選びをしているのでしょうか。
電気料金の変化や、日本が学ぶべき成功・失敗ポイントについてまとめました。
さすがは産業革命の国!
イギリスは電力自由化においても世界をリードする存在です。
結論から言えば成功しているようですが、どのようなプロセスで自由化が進められてきたのでしょうか。
また、一般消費者の声は?
電力自由化を推進していたアメリカで大停電が起こった!というハプニングは、これから自由化を進めていこうという段階にあった日本にも大きな衝撃を与えました。
「やっぱり自由化ってリスクが大きいんじゃないの?」「経済は活性化するかもしれないけど、そんなリスクを負うよりも現状維持で良いんじゃないの?」という印象を持った方も多いかもしれません。
しかし、海外の事例は失敗ばかりではないのですよ。
例えばイギリス。
1979年から自由化が推進されていて、「世界の電力自由化の動きをプッシュするきっかけを作った国」とも言われています。
もともとはイギリスでも国営の電力会社が電力事業を独占していたのですが、サッチャー政権が経済政策の柱として自由化を推進。
当時は「不況を脱する切り札」とも考えられていたようです。
1990年に、国営の電力会社が4つの会社(3つの発電会社と1つの送電会社)に分割・民営化され、新たに50を超える新電力会社が参入してきたそうです。
1999年にはすでに一般家庭でも電力自由化が導入されたということですから、日本とは20年近くも差があるわけですね!
ただ、電気料金は高くなっているというのが現状。
この背景には、発電した電力を強制的に集めて販売するという「強制プール制」 が採用されていたことなどが関係しているようです。
2015年現在ではこの制度は廃止され、企業間がより自由に競争できる制度(NETA、BETTA)に移行しています。
今後は私たちも個人で電力会社を選ばなければならない時代になるわけですが、一歩先を行っているイギリスの消費者たちは自由化をどう捉えているのでしょうか。
一体、どうやって電力会社を選んでいるのか・・・。
調べてみたところ、イギリスには「Cooperative Energy」という日本で言うところの生協のような組合があり、こちらを通じて電気の供給を受けている方が多いようです。
組合・・・というか、そのような形態で電気を売っている”一つの企業”なのです。
生協の原理といえば「みんなで助け合う」ですから、利益は追求しない非営利団体。
簡単に言うと、電気を組合員みんなで分け合うというイメージでしょうか。
この形態だと個々のお宅の電気料金が非常に安くなるのだそうです。
また、「電気料金は高めでも良いから、地球に優しい方法でエネルギー開発を行っている会社から電気を買いたい!」という方には、再生可能エネルギーをメインとした電力開発を行う「Good Energy」という新電力会社が人気です。
このように、その人の価値観に合わせて電力会社を選べるというのが電力自由化のメリット。
とにかく電気料金を安くしたいのか? それともエネルギーの開発方法にこだわりたいのか?
イギリスのみなさんのように、私たちも自分なりのポリシーを持って電気の購入先を選ぶことが大切です。
イギリスでは全体の約4割の方が他社への“乗り換え”を経験したことがあるというそうですから、それだけ一人一人の意識が高いことがうかがえます。
この点は、私たち日本人も見習わなければなりませんね!
平屋には平屋の、スマートハウスにはスマートハウスならではの“適した料金プラン”がきっとあるはずです。
これまでは、電気の購入先は地域ごとに決められていました。
数多くの企業の中から、「A社のプランはこういうメリットがあるけど、B社のプランはこんな点が魅力。C社は・・・あ~、もう、どこと契約しようかな!」とあれこれ迷う必要がなかったわけです。
これからは、それぞれの家庭に見合ったプランを自分たちで選び出さなければなりません。
イギリスでは、消費者の負担を軽減するために政府レベルで非常にわかりやすい仕組み作りに取り組んでいるのだとか。
その一つが、数あるプランを一目で比較できるWEBサービス(「マッチングサイト」と表現したほうがわかりやすいかもしれませんね!)。
自宅の郵便番号を入力するだけで、契約可能な電力会社のプランの詳細がわかりやすい形で表示されるのだそうです。
電気料金の比較もできますので、「一社一社のプランを個別に調べて自分でエクセルの表にまとめて・・・。」なんて手間が省けるわけです!
電気料金のプラン数を制限するという規制も設定されており、4000以上もあった料金プランがトータルで100程度に抑えられているというのも消費者目線の取り組みですよね。
選べるのはありがたいですが、数が多過ぎて選びきれないというのも困りますからね・・・。
日本政府も、ぜひこのようなイギリス政府の取り組みを見習って、私たちの負担を少しでも軽減してくれる方法で動いて欲しいものです!
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